日本小児麻酔学会第24回大会の見どころ
【招待講演】
招待講演はシミュレーション教育、緩和医療、慢性痛、感染症、感染対策の各分野から6人の専門家に来ていただきます。すべて小児に関連し、小児を扱う麻酔科医が知っておくべき内容と考えています。
シミュレーションは日本のシミュレーション教育の第一人者であり、2019年の日本医学シミュレーション学会会長である大阪医科大学麻酔科の駒澤伸泰先生、および島根を拠点にシミュレーション教育に実地に奔走している島根大学麻酔科の日下あかり先生にお願いしました。小児の蘇生、急変時対応などへの経験値を個人として、さらにチームとして高めるには、シミュレーションを用いたトレーニングは欠かせなくなっています。緩和医療は国立成育医療センター総合診療部緩和ケア科で、以前は神戸大学で緩和ケアに従事しておられた余谷暢之先生に、慢性痛は日本大学麻酔科の加藤実先生にご講演いただきます。小児の麻酔を行うことがあっても、小児の緩和や慢性痛の話題はなかなか身近にはならないかもしれません。しかし小児を扱う麻酔科医は、緩和ケアチームの一員になることもありますし、小児慢性痛患者の相談を受けることもあるかもしれません。知識のアップデートの良い機会と考えています。感染症は兵庫県立こども病院感染症内科で、小児感染症領域の第一人者である伊藤雄介先生にご講演いただきます。小児麻酔において感染症、特に上気道感染症は大きな問題で、かぜ症状のある児に麻酔を行うかどうか悩みがつきません。判断に悩むときの解決の糸口となることを期待しています。感染対策はあいち小児保健医療総合センター麻酔科の宮津光範先生にお願いしました。小児を麻酔するときは気道や循環への対応が精一杯で感染対策がおろそかになっていることもあるかもしれません。小児病院で勤務する立場から、感染対策の第一歩を考える機会になればと思っています。
【シンポジウム】
シンポジウムは3本企画しました。一日目午前は「小児救急・集中治療と麻酔科医の関わり」と題し、小児を扱う集中治療医の立場から、集中治療の魅力や、麻酔科医とのかかわり、麻酔科医が知っておくべき知識などについて語っていただきます。二日目午前の「麻酔導入時のこどもの不安を取り除く」は、小児の導入でこどもを泣かせない、穏やかな導入を行うにはどうすればよいのか、という難しい課題に、解決の糸口が見つかることを期待しています。小児を多く扱う施設に勤務する4名のエキスパートから意見をいただくとともに、兵庫県立こども病院に患者として何度も全身麻酔を受けた方から、患者視点での意見もいただきます。二日目午後は「小児周術期看護最前線 看護の真髄~再考して最高へ」です。周術期を安全・快適に乗り切るには、特に小児においては看護の力は絶大です。術後回復室(PACU)、区域麻酔、新生児、さらには海外協力と、広い視点で演者を集めていただきました。看護師による関わりによって患者の安全が担保され、回復が助けられていく様子を知っていいただく良い機会になると考えています。
【ビデオセッション】
一日目午後のビデオセッションは小児麻酔で行われる各種手技を、基本的なものから高度なものまで、動画を含めたプレゼンテーションをしていただくセッションです。神経ブロック、身体各所エコー、合計14の手技をご紹介いただきます。小児でも必須の手技となってきた神経ブロックでは日本の先進的施設に加えて、シアトル小児病院のBosenberg先生にもご発表いただきます。身体各所エコーでは、診断や病態把握に活用されているpoint of care ultrasoundについて深めるよい機会です。胃、仙骨、さらには日本ではあまり行われていない脊髄くも膜下麻酔までを網羅します。どうやればよいか、うまくいくか、が伝わるセッションになればと思っています。
【岩井誠三記念講演】
シアトル小児病院のAdrian Bosenberg先生は、小児の硬膜外や区域麻酔の論文を読めば必ず名前が入っている、その道の先駆者です。1998年、第4回小児麻酔学会のときに来日されていますが、その時に小児の区域麻酔のご講演をされています。今回は、元茨城県立こども病院麻酔科の山下正夫先生をはじめとする日本の方々とのつながりと、兵庫県立こども病院がシアトル小児病院と姉妹病院であることなどを通して、来日を依頼して実現しました。先生は南アフリカ出身で、小児麻酔を通した海外協力のために世界を飛び回っています。今回はそうした海外協力の経験からのお話をいただくことにし、同時通訳も用意しました。広い視野から私たちの日常を考える良い機会となるのではないかと思っています。
【企業共催セミナー・企業展示】
企業共催セミナーとしてランチョンセミナー、スイーツセミナー、モーニングセミナー、スポンサードシンポジウムを設けました。共催セミナーでは各社それぞれ、気鋭の演者にup to dateな講演を依頼しています。ロサンゼルス小児病院からは小児麻酔科医としてご活躍の名越真先生に来ていただきます。各社の話題は集中治療、鎮静、気道、鎮痛など広い領域にわたっていますので、ご興味に応じてご選択ください。また企業展示ブースはポスター会場の横ですので、ポスターの発表、閲覧の時にどうぞご覧ください。
【ハンズオンセミナー】
ハンズオンセミナーは、今回3本を企画しました。一日目には今回初の試みとなる「シナリオシミュレーションを用いた小児周術期急変対応」(駒澤伸泰先生)を行います。小児の急変にいつでも対応するためには、シミュレーションによるトレーニングが最適と考えます。 二日目午前の「小児の神経ブロック」(宮澤典子先生)は区域麻酔学会認定セミナーで、小児領域でも神経ブロックの活用が進んでいることも合わせて、例年好評を得ています。二日目午後の「小児のABCD sonography[petit]」(鈴木昭広先生)はPoint of Care超音波を小児の麻酔・臨床に役立てる契機となると考えます。 二日目のセミナーでは実際の小児モデルに協力いただきます。参加申し込みは事前登録に合わせております。いずれのセミナーも人数に限りがありますので、お早めにお申し込みください。
【一般演題・若手研究奨励演題】
一般演題は139題、若手研究奨励演題は20題を採択し、その中から一般演題5題、若手研究奨励演題2題を優秀演題としました。一般演題の優秀演題は一日目9時から、若手研究奨励演題の優秀演題は一日目夕方のセッションで口演していただきます。また今回、一般演題の優秀演題はポスター掲示も行っていただきます。優秀演題以外の演題も、臨床上有益な報告や研究が数多く見受けられました。一般演題でも若手研究奨励演題でも、これから小児麻酔を担う可能性のある若手の医師が、多くの会員の前で発表する姿が見られることでしょう。ぜひ活発なご討論とともに、年長の先生方からは暖かいご指導をいただければと思います。
一般演題の企画として、英語セッションを設けました。国内のみならず海外からも含めて合計7題のご応募をいただきました。2020年のJSPA-ASPA合同学会も視野に入れ、国際感あふれるセッションになると期待しています。アイデア、周術期看護演題もそれぞれ6題を選定いたしました。
【看護に関する演題】
小児の手術看護、周術期看護は、手術を受ける小児にとって大変重要と考えています。しかしながら「小児看護学会」「手術看護学会」はあっても「小児手術看護学会」はありません。このため、小児麻酔学会が小児の周術期看護を担う人材の交流の場となってきました。今回は二日目午後のシンポジウム3「小児周術期看護最前線 看護の真髄~再考して最高へ」および一日目午後の一般演題「看護」が看護関連に該当しますが、さらにシンポジウム2「麻酔導入時のこどもの不安を取り除く」も看護師の皆様にはぜひ参加、聴講していただければと考えています。
【交流企画および懇親会】
会員間の交流を深めていただくため、施設紹介展示コーナーを設けました。ここでは小児麻酔・小児医療に注力している施設の情報をご覧いただけます。こちらの展示申し込みは9月20日まで受け付けていますので、自施設を紹介したい、小児麻酔に従事する人に来てもらいたい、患者を紹介してほしい、などの施設はどうぞお申し込みください。A4サイズもしくはA2サイズのポスターで、無料となっています。スペースに限りがありますのでご希望のご施設はお早めにお願いします。
また一日目18時からの無料会員懇親会にぜひご参加いただき、会員間の交流を温めていただければ幸いです。懇親会では一般演題、若手研究奨励演題、英語セッション、ビデオセッションの中から優秀賞に対して表彰を行います。兵庫県立こども病院有志によるクラシック演奏も予定していますので、ぜひお楽しみください。
【全体を通した楽しみ方】
テーマ「もっと広く もっと深く」に合わせて、様々なプログラムを用意しています。「もっと広く」勉強したい場合は、各講演会場に並んでいるプログラムを縦に聴講していただく方法が簡単です。特に第一会場では前方に机も準備する予定ですので、ゆったりと聴いていただけると思います。一方、特定の領域について「もっと深く」知りたい場合は、その領域を選んで会場間を動いていただくことになります。領域ごとに時間の重なりが少ないよう、ある程度配慮しておりますので、プログラム上でご確認いただけますと幸いです。